煙たい幽霊

3/6

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
 幽霊との出会いは、私を少し変えた。  我慢するのをやめた。つらい時は休むし帰る。合わない店員がいる時は、避けたり買い物をやめて帰ったりした。下手に我慢していいようにされてると、相手は覚えて繰り返すかもしれないのだ、あの上司のように。  おかげで仕事もロクに探せなかったが、自分がどんな時にどうなるかが、わかってきた気がする。ちゃんとする前に現状把握よ、メリーアン。  火花を見かけたら、必ずその方向へ向かった。おかげで物理的な災厄は避けることができている。  幽霊や呪いのことは知りたかったが、それはとりあえず頭から追い出した。調べようがない。  それに、もし調べて色々わかったら、アイツは契約違反になるのではないか。その時あの幽霊がどうなるのか分からないが、悪い結果はなるべく避けたかった。 『すまなかった』  ダメ、思い出すと泣く。 ※※※  雨が降ってきた。  ショールをかぶって走り、廃墟のようになった店舗の前で雨宿りする。 「へぇ」 「⁈」  いきなり腰を抱かれて、暗い中に引き摺り込まれた。  逃げようとしたが、ショールを落としてしまった。どっと恐怖感が襲ってくる。 「こんな田舎にも居るもんだな」 「ひ……」  腰を掴まれて引き寄せられるが、身体が動かない。息もできない。怖い、怖い……‼︎  脳裏に赤毛碧眼の幽霊が浮かぶ。けど、アイツの名前も知らない。  ボッ……パチン。  ライターの音⁈ 「手を離せ」 「なんだテメェ!」  赤毛碧眼の幽霊が、男の額に煙草を押し付けた。額が燃える。 「ギャァアアア‼︎」 「聞け」  尻餅をついた男に、赤毛の幽霊は煙草を突きつけた。 「お前は雨宿りでここに入ったが、ここは危ないので出ていく」 「……でて…いく…」  額の火が消え、男はフラフラと外に出て行った。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加