2人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
幽霊との出会いは、私を少し変えた。
我慢するのをやめた。つらい時は休むし帰る。合わない店員がいる時は、避けたり買い物をやめて帰ったりした。下手に我慢していいようにされてると、相手は覚えて繰り返すかもしれないのだ、あの上司のように。
おかげで仕事もロクに探せなかったが、自分がどんな時にどうなるかが、わかってきた気がする。ちゃんとする前に現状把握よ、メリーアン。
火花を見かけたら、必ずその方向へ向かった。おかげで物理的な災厄は避けることができている。
幽霊や呪いのことは知りたかったが、それはとりあえず頭から追い出した。調べようがない。
それに、もし調べて色々わかったら、アイツは契約違反になるのではないか。その時あの幽霊がどうなるのか分からないが、悪い結果はなるべく避けたかった。
『すまなかった』
ダメ、思い出すと泣く。
※※※
雨が降ってきた。
ショールをかぶって走り、廃墟のようになった店舗の前で雨宿りする。
「へぇ」
「⁈」
いきなり腰を抱かれて、暗い中に引き摺り込まれた。
逃げようとしたが、ショールを落としてしまった。どっと恐怖感が襲ってくる。
「こんな田舎にも居るもんだな」
「ひ……」
腰を掴まれて引き寄せられるが、身体が動かない。息もできない。怖い、怖い……‼︎
脳裏に赤毛碧眼の幽霊が浮かぶ。けど、アイツの名前も知らない。
ボッ……パチン。
ライターの音⁈
「手を離せ」
「なんだテメェ!」
赤毛碧眼の幽霊が、男の額に煙草を押し付けた。額が燃える。
「ギャァアアア‼︎」
「聞け」
尻餅をついた男に、赤毛の幽霊は煙草を突きつけた。
「お前は雨宿りでここに入ったが、ここは危ないので出ていく」
「……でて…いく…」
額の火が消え、男はフラフラと外に出て行った。
最初のコメントを投稿しよう!