2人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「俺はショールを拾えない。悪いが自分で取ってくれ」
「あ……あ」
今更のようにガタガタ震えが来て、涙がボロボロ出てきた。でも、泣いてる時間はない。煙草が消えたら幽霊も消えてしまうのだ。カクカクしながら、なんとかショールを取り、強く体に巻く。
「あ…ありがとう…」
「遅れてすまん。雨で行動が遅れた」
幽霊は苛立たしそうに煙草をスパスパ吸っていたが、一気に煙草が減ったのをみて唇から離した。
「煙草……少ないって…」
「これが最後の箱だ」
幽霊は箱を開けて見せてくれた。煙草が一本。
「無くなると…どうなるの…?」
「姿が出せなくなる。奴に……」
またミュートされた。幽霊はため息をついて「気にするな」と言った。いや気にするでしょ、大事な一本使わせちゃったじゃないの。
時間がない。聞いた。
「わ…私が、アンタを呼ぶ方法って、ある…? 今回、みたいな時…に」
「名前は教えられない」
「あだ名とか…は…」
「ふむ」
足元には、さっきの男が散らかして行ったハンバーガーの包み紙やカップが落ちていた。
「M…そうだな。ちょっと呼んでみてくれ」
「え…M」
コートに文字は出ない。
「いけそうだ。お前、そのショールをいつも持っているな? じっとしてろ」
幽霊は、私のショールに煙草の火で字を書いた。
『メリーアンはMの文字を三回叩けば俺を呼べる』
「これでいい。何かあれば、Mの字を三回叩け。Mの字なら何でもいい。そうしたら雨でも雪でも、俺はすぐ駆けつけられる」
煙草が消え、幽霊も消えた。
「あ、待って! た、煙草は…使わなくていいから教えて!」
呪いのことで、ふと気になったことを慌てて聞く。
「家で……私、家の中で、火花を、見た事がない。家の中には、呪いは、来れないの? YESなら一回、NOなら2回、火花を散らして」
火花は一回、散った。
最初のコメントを投稿しよう!