本当の愛をあなたに

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 私にはずっと憧れていることがあった。それは両親みたいに、初めて付き合った人と結婚することだった。  だから彼から付き合おうと言われてもすぐには応じず、彼の人柄を見て優しい人だと確信してから付き合いを始めた。関係性を深めるのも少しずつ。今時と言われそうだけど、後悔だけはしたくなかった。  付き合い一年、私は彼に全てを許した。運命の相手だと信じていたから……。  でも、そうゆう関係になった途端彼は変わり、束縛してくるようになった。  サークルの男性メンバーと少し話しただけで、同じ学部の女友達と遊んだだけで怒鳴り、物を投げつけてきた。  見かねたサークルのメンバーや友達は別れるように諭してくれたけど、私は聞き入れなかった。体まで許した相手と別れるなんて、出来なかった。  結果私はサークルを辞め、友達との関わりも避けた。それは私の世界をより狭め、もう彼しかいなかった。  だけど半年前から、大学とバイトを辞めて結婚して欲しいと言ってきた。私が将来の為に勉強や就職活動を頑張っているのを知っていたのに、夢も大切な居場所も奪おうとしてきた。  私は初めて彼に反発した。そしたら……手を上げられた。  なんとかマスクで誤魔化して、内定もらって大学もバイトも通っていたけど彼はそんな私を許さず、暴力はエスカレートしていった。  何度殴られても、「もうしない」という言葉を信じて一緒にいたけど、だめだね。あれは直らない。離れる以外、解決方法なんてないよね。  今日一日、後藤くんと一緒に居て薄々気付いていたことを確信した。それは彼の自分本位な性格。今も優しいけど、それは押し付けの優しさ。私の意見なんて聞いてくれたことなかった。  どうしてただのバイト仲間が私を守ろうとしてくれるの?  どうして愛しているあなたが私を守ってくれないの?  一番守って欲しい人に暴力振るわれるって、これほど虚しいことだったんだ……。  気付けば私の目から涙がポロポロと落ちており、それは降りゆく雪のようにとどまることがなかった。 「これから店長夫婦の元に行きましょう。いつでも匿うと言ってくれていました。そして、別れましょう。俺、身内のフリしますよ。こうゆう時は男が側にいた方がいいですから……」 「ごめんね……。こんな姿見せて……。ごめんね……」 「……先輩が謝る必要はありませんよ」  後藤くんはそう言ってくれるけど、私は最低のことをしていた。  以前、バイト前に後藤くんが着替え中である事に気付かず、うっかり更衣室を開けてしまったことがあった。その時に見てしまった、背中のただれた痕を。  おそらくあれは火傷の痕で、きっと辛い思いをしてきた過去があるのだろう。  後藤くんが感情を表に出さない性格なのもきっと……。 「……ごめん、本当に」 「そう思ってくれるなら、一刻も早く別れてください」 「うん……」
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