ポケットの中

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 珍しく沈黙、かと思ったら…… 「……じゃーんっ!!ポ〜ケットの中から、ティラノサウルス〜!」  パッと手のひらを見せられて反射的にジト目を向けてしまった。  何でポケットの中にそんな恐竜のソフビが?  なのに、 「凄ぇだろ?」  灯吾はにこにこと笑う。  さっきまでの別れ話とか変な緊張感とか、珍しく真面目な顔とかはどこに? 「あのねぇ……」  ため息を吐くと、こっちを見ていた灯吾が嬉しそうにしていた。 「美月はそうやって俺の隣に居たらいいの!」  犬が全力で尻尾を振るようなその姿。 「はぁ?」  いつもの姿にホッとするのに目を細めることしかできない私に、 「俺がいつでも笑わせてやるから!」  灯吾は満面の笑みを向けてくれる。 「いや、笑えないけど?」 「えー?」  大袈裟にする灯吾に握られるまま、ただ手を繋いで歩いた。
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