ポケットの中

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「別れるとか言うな」 「や、だって……」  笑顔を引っ込めて真顔をされて返答に困る。なのに、 「別れない!」  灯吾は迷いなく言い切った。 「や、何で?」  わからなくて聞くが、 「何でって好きだからだろ?」  灯吾はサラリと答える。 「……へ?」 「へ?って……むしろ、何だと思ってたワケ?」  呆れたような顔をされて私はただ瞬きを繰り返した。  何だとって……同情?  いい加減、私に縛られていないで自由になればいいのに……。  頭を()ぎるが口にはできない。  何となく灯吾が怒る気がしたから。  俯くと、灯吾は手を繋いだまま腰を曲げて私の顔を覗き込んできた。 「言ってみ?」 「……いい」  プイッと顔を背けると、灯吾はそれ以上ツッコんで来ないで腰を戻す。  代わりにギュッと手をしっかり握られて、私はその手を見つめた。
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