ポケットの中

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「……あの頃さ……俺が離たから美月は誘拐されて辛い目に遭った、とは思ってるよ?」  不意に灯吾の声が真剣味を帯びてドキッとする。 「や、それは……」 「だから、もう絶対離さないって思ってる!」  それは違う、と否定したい。  なのに、灯吾は私の言葉は聞いてくれなかった。 「だから……」 「でも、ただ好きなんだ」  気にせず被せてじっと見られる。 「……」 「美月が好き……ダメ?」  笑って首を少し傾げるなんてズルいと思う。  そもそもそれまでの言葉も……全部ズルい。  でも、私は…… 「…………ダメじゃない」 「よっしゃぁっ!!」  拳を突き上げて笑う灯吾がかわいいと思う。  普段、呆れるくらい幼いけど……実はめちゃくちゃ大人だったりするし。 「……灯吾」  呼び掛けて振り返った灯吾の肩に手を付いて背伸びをする。  チュッとその頬にキスをすると、灯吾は顔を真っ赤にした。 「なっ、なっ、なっ……!!」  アワアワする灯吾は珍しい。  灯吾が隣でバカやって守ってくれるから、私は今日も安心していられる。  たくさんの愛をくれるから……私……も?  これからもそんなキミの隣に……居させてね?
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