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あれから数年経ったが、もしもその木が育っていたら嬉しい。花梨が生きていた証のように、カリンの木がその命をつなぐのだ。
「リンリン、今年も実がなったよ」
手にする黄色い果実。それはいつも花梨を思い出させてくれる。
するとニコニコと小春日和みたいな笑顔を浮かべた娘が、カリンの果実を腕一杯に抱えてやってきた。
「お母さん、コンポートも食べたい!」
「うん、じゃあどっちも作るね」
「やったー」
当たり前ではない毎日。
私はそれを噛みしめて生きてる。
いつかあなたに会った時に、誇れる自分であるように。
(了)
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