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6. つなぐ、あなたの証
10数年後――
「お母さーん」
12歳になった娘が黄色い果実を木から捥いで駆け寄る。
「何?」
「リンリンのジャム、また作って?」
娘はカリンジャムをこう呼ぶ。
「うん。じゃあ、あと3つくらい取ってきて」
「はーい」
娘はカリンの木に向かってパタパタと駆けていった。
花梨の実家でもらったカリンの実は、匂いを楽しむのでもなく漬けるのでもなく、種を植えた。
実がなるまでは10年かかった。
10年で初めて実をつけ、その実は花梨の実家に持っていった。
「リンリン、いい匂いだね」
仏壇に供えたカリンの実は、芳醇な甘い香りを漂わせる。
もう、花梨が生まれた時に植えた木はなくなってしまっていたけど、こうして受け継がれて残っているものがある。
「うぢの庭にも種植えるべーがね」
そう言って花梨の母が嬉しそうに笑っていたのが印象的だった。
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