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青年はその後も砂浜を訪れ続けた。間隔を数えてみると、だいたい7日おき、1週間に1度の頻度でやってくるようだった。魂が抜けたような表情で海に向かって佇み、へたり込んでひとしきり泣いたあと、後ろ髪を引かれるように去っていく、というのがいつものパターンだ。
しかし、そろそろ5度目の来訪になろうかというその日は違った。泣き終えて立ち上がるまでは同じだったが、その滲んだ目は遠くを見据え、強い意志のようなものを感じた。まさか、と思ったときにはもう、彼は海に向かい始めていた。ざぶざぶと水飛沫をあげながら、迷いのない足取りで突き進んでくる。
わたしは反射的に彼の前に立ちはだかり、両手を伸ばした。彼の肩が触れた瞬間、温かい体温が伝わってきて、その時になってようやく、この世のものには触れないはずだということを思い出した。
彼の方も感触のようなものがあったのか、ぴたりと止まると、肩のあたりを自分で触れて確かめるような仕草をした。そしてその手を伸ばしてくる。わたしは避け、彼の背後に回って肩に手を置いてみた。彼の身体が大きく跳ねた。
「ハル!?」
勢いよく振り返った顔が目の前に来る。生前のわたしなら耳まで真っ赤になっていただろう。幸い、今のわたしに焦点が合うことはなく、その視線は空中をさまよっていた。
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