空仰ぐ

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 通された個室には六人がけの円卓がふたつあり、ばあちゃんのきょうだいと伯父さんが分かれて座っていた。僕たちが最後のようだ。一斉にあいさつ合戦が始まる。僕も真似をして頭を下げる。  ばあちゃんのお葬式で初めて会った親戚と呼ばれる人たちはどうも苦手だ。僕とは違うルールの中で生きてるように見えて、どう接するのが正解かよくわからない。 「あら〜ハルくん大きくなったね〜」  大人どうしのあいさつが終わり真っ先に話しかけてきたのはばあちゃんの妹のミエコさんだ。 「一年で八センチ伸びました」  きょうだいたちはどよめき、楽しげに感想を口にする。育ち盛りだな、若いっていいわね、などなど。そんな中ミエコさんは細い目をさらに細めて僕を覗きこんだ。 「いつの間にか姉ちゃん越しちゃったわね」  部屋中が笑いに包まれる。体の芯がかあっと熱くなった。  この場から逃げだしたかった。この熱は誰にもわからない。伝わらない。ぶつけてはならない。かといって逃げることもできない。歯をかたく食いしばる。  子ども扱いされたことよりも、場を盛り上げる着火剤に使われたことが不快で、それを表現する術がないことが悔しかった。 「がんばります」  言葉を飲んで代わりの返事をする。正しい答え方かは微妙なところだがみんな満足げに席に戻るのでたぶん大丈夫だ。僕ら家族もコートを脱いで空いた席に座った。
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