邪魔者はもういないから

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 次の日曜日、早速計画は実行された。  遥先生が働く店は、駅から伸びる商店街の一画にあった。朝奈が想像していたような気安いコーヒーチェーン店ではなく、純喫茶と呼ばれる類のレトロな外観をしていた。  ひとまず朝奈たちは、通りに面したガラス窓から中を覗いてみる。昼時を過ぎ、客は落ち着いているようだったが、やはり子どもだけでふらりと立ち入れそうな雰囲気ではない。  そもそも受験を間近に控えた貴重な休日に、こんなことをしていていいのだろうか。  今更ながら、朝奈は不安になってくる。二人とも、親には図書館で勉強をしてくると言って家を出てきた。嘘がバレたらただごとでは済まないだろう。特に聖也は。  ここまで来てしまったことを、朝奈はとっくに後悔していた。 「やっぱり、帰らない?」 「帰りたいなら帰っていいよ。僕は行くから」    聖也は毅然と言い放ったが、扉の前を行ったり来たりしながら、なかなかその先に踏み出そうとはしなかった。先程から瞬きが増え、指先は落ち着きなく後頭部を掻いている。  いっそこのまま、聖也が諦めてくれたらいのに。もしくは今日、遥先生のバイトが休みでありますように。心の内で願ったその時、内側から勢い良く扉が開いた。 「聖也君と朝奈ちゃん? 二人とも、こんなところで何してるの?」  それはひさしぶりに聞く、遥先生の声だった。
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