ヒルダと雪の思い出たち

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 ***  偉大なる魔女が作ったとされる、マジカリア王国。この王国は、四つの四季を司る女神が守っている国としても知られている。マジカリア王国の始祖である“白夜の魔女”が契約をかわした、四大女神だ。  その女神たちは氷の人形に魂を吹き込むことで、新しい神様を生み出すちからを持っている。その新しい神様たち、つまり女神様たちの娘たちがそれぞれ母神から役目を貰い、それぞれの四季に応じた細かな仕事をこなしているというわけだ。  最北端に位置するこのホワイトタウンは、北にホワイトマウンテンという大きな山を持っている。この山の中腹に冬の女神様の神殿があり、女神様の娘である雪の女神様も同じく神殿で暮らしていると言われているのだった。  恐らく、雪の女神様になんらかのトラブルが起きている。  そのせいで、みんなが雪を忘れてしまい、雪が降らなくなったと考えるのが自然だ。もちろん他にも原因があるかもしれないので、大人達が今必死で調査をしているところというわけだが。  問題はこの雪の女神様が、結構な恥ずかしがりやで、気難しいということ。彼女は大人(具体的には、十八歳以上の人間)の前には絶対に姿を現してはくれないという。多少危険があっても、それ以下の子供が会いに行くしかコンタクトを取る方法がないのだ。  幸いにして、神殿への道はきちんと整備されている。防寒対策さえしていけば、そうそう道に迷うようなこともないと言われていた。特に、見習いとはいえ私達姉妹は魔女である。体を暖かくする魔法なんかも、一応心得ている。 「気を付けてね、ミランダ、ヒルダ」 「足元をしっかり見るんだぞ」 「大丈夫だよ、お母さん、お父さん!」 「行ってきます!」  麓で二人に別れを告げ、私は姉としっかり手を繋いで歩き出したのだった。背中に背負ったリュックと中の荷物が重たいが、ここは我慢である。  皮肉にも、雪が失われたせいで空は綺麗に晴れ渡り、道もすっかり乾いている状態。これならば、神殿まで行くのにそう時間もかからないだろう。
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