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ヒルダと雪の思い出たち
「じゃあ、クイズね?」
私は息を大きく吸い込むと、言葉を発した。目の前には、不思議そうな顔をしたクラスメートの少女達がいる。
「これはなんでしょうか?ヒント一、天気。ヒント二、空から降ってくるもの。ヒント三、クリスマスにやってくるととっても美しいもの、ヒント四、水不足の解消になるもの、ヒント五、白くて冷たいもの!」
正直なところ――本来、クイズにさえなっていない簡単な問題である。
天気だと言った時点で絞れているし、空から降ってくるものなんて雨を除けば本当に限られている。さらに白くて冷たいもの、ときた。ここまで話して分からないなら、さすがに残念がすぎるだろう。
ましてや、私達が暮らすホワイトタウンは、去年かなりの降雪量があった。目の前にいる友人達ともたくさん真っ白な世界で遊んだのだから、覚えていないはずがない。
そう、本来ならばそのはずなのだが。
「ええ、なんだろう?」
少女たちは互いに顔を見合わせて言う。
「空から降ってくるものって、雨くらいしか……嵐とか台風とかなら、降ってくるって言い方しないよね?」
「水不足の解消になるもの、で雨以外にある?」
「白くて冷たいの?氷ってこと?」
「……ヒントその六、去年一緒に遊んだもの」
「ええ、わかんないー」
ねー、と言い合う友人達。まずい、これはまずい、と私は冷や汗をかく。どう考えたって異常事態が起きている。
「ヒルダの問題は難しすぎる。答え教えてよ」
ついに、そのうちの一人が言い出した。私は引きつり笑いを浮かべて告げる。
「答えは雪、なんだけど……」
案の定彼女らは口を揃えて“雪ってなあに?”と尋ねてきたのだった。
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