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二人が歩いていると前方から見慣れない風体の者が近づいてきた。女性2人組のようだった。一人は小柄な亜麻色の長い髪をした女性で、もう一人は背が高く黒髪の落ち着いた雰囲気の女性だった。
亜麻色の髪の女性が二人へと歩み寄ってきた。
「あの、この村の方ですか?」
その問いに二人は頷いた。
「この村は絶えず音楽が流れていると聞いたのですが、いまは……何か時期ではないとかそんな理由で?」
アリスは首を横に振った。
かつては、収穫祭の季節は音楽が鳴りやまず、多くの人が訪れる村だった。
しかし、戦争が続き収穫祭も行われなくなった今、村では音楽は流れなくなってしまっていた。
「いえ、もう永く音楽は流れていません」
リヒトが言った。
「戦争が続き、大人が減り、作物の収穫ができず、収穫祭はもう何年も行われていません」
「そう……ですか」
亜麻色の髪の女性が憂いを帯びた表情で俯いた。
「あの――」
「ヒナ」
亜麻色の髪の女性が何かを話そうとしたとき、後ろにいた黒髪の女性が遮った。ヒナと呼ばれた女性が彼女へと振り返る。
「お二人は重たい荷物をお持ちだ。あまり足止めさせるべきではない」
その言葉にハッとなった顔をした亜麻色の髪の女性・ヒナは慌てて頭を下げる。
「失礼しました。お疲れのところを」
「いえ、いつものことなのでこれぐらい大丈夫です」
「いつも?」
ヒナは驚いた表情を見せた。
「いつもって……貴方はどう見ても十五、六歳でしょう? そんな買い出しなんてしているの? 学校に通う年ごろでしょう?」
「仕方ないんです。大人が全然いない町ですから。私たちが頑張らないと」
アリスは十六歳、リヒトは十五歳、この町で暮らす者の中では老人を除けば比較的、年長者にあたる。それほどまでにこの町は大人が少なかった。
「ヒナ」
「あ、はい」
「二度、言わせないで。彼らは重たい荷物をお持ちだ」
「……ご無礼を」
ヒナは頭を下げるとアリスの横を通り抜けていった。
「旅の人達かぁ……最近はめっきり減ったよね」
リヒトの言葉にアリスは頷いた。アリスは遠ざかる二人をなんとなく見送っていた。
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