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熱風が巻き起こった。
あまりの暑さにアリスは倒れた。目が灼けるように痛かった。
「ぐああああ!!」
兵士たちの悲鳴が聞こえた。何だ、何が起きてるんだ。ヒナは大丈夫なのか、アリスは痛む目を開こうとした。何かが焦げたような嫌な臭いが漂い始めていた。朧気な視界の中で兵士たちは地面に倒れていた。そして、一人立っている漆黒の髪を持つ女性が見えた。
「ご無事で?」
「遅いよ」
黒髪の女性――クレア――は、地面に倒れていたヒナの肩を抱えて起こした。
「あー、髪が焦げてるし!」
ヒナは毛先を見ながら声をあげた。
「失礼しました。あの場合、炎舞の魔法を使うしかないと判断して――」
「いいんだけどさぁ……あーあー……ってアリス、大丈夫?」
まだ煙が漂う中、ヒナは微笑みながらアリスに尋ねた。
「何が起きてるの……?」
「驚かせてごめんね。サキが急に魔法なんか使うから――」
「サキ?」
それはこの国が誇る爆炎の魔法使いの名前ではないか。アリスが目を開いて驚いているとクレアは大げさにため息をついた。
「姫、緊急事態とはいえ急に素に戻らないでください。隠密行動が台無しです」
「あ」
ヒナもまた大げさに右手の掌を口元にあてた。
「でもまぁ……いっか」
「さっきから何を……」
「この方こそがアークブレッド国・第一皇女であらせられるエイミ姫です」
クレアは跪きながら言った。その言葉に思わずアリスは「ええええ」と叫んでしまった。
「ほら、さっき言ったじゃん。クレアは姫じゃないよ、って。あれは嘘じゃなかったでしょ?」
ヒナは笑った。
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