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 風が吹き抜ける。  ひび割れた石畳の道をアリスは歩いていた。隣の町から買ってきた重たい水の樽を三つも背負い、両手にも荷物を持っていた。体力には自信のあるアリスだったが、これだけの荷物があれば息も切れる。歩きながら額に汗が浮かぶことをアリスは感じていた。 「アリス、手伝うよ」  前方から白いマントを羽織った少年が駆け寄ってきた。アリスが背負っていた樽をひょいと二つばかり取った。 「ありがと、リヒト。いつ帰ってきたの」 「ついさっきさ。木材とかは全部そろった」  その言葉にアリスの顔が輝く。 「わ、じゃあランスさんの家、直せるね」 「そうだな。それにしてもよく三つも背負ってきたな」 「だって……買い出しなんてなかなかいけないし。水は貴重でしょ」 「そりゃあそうだけど。アリスは女の子なんだから無理しなくていいと思うよ」 「女の子だからって……のんびり家で待ってるなんて許されないでしょ、この国じゃ」  ここアークブレッド国は、近年、隣国・スエイク国との争いが続き、平穏な日々が続くことはなかった。絶えず物資や食料は不足し、王宮のある王都を除くと貧しい町や村が多かった。  この村も例外もまた例外ではなかった。 「みんな王様が悪いんだよ。王宮から離れた町のことなんて何も知らない」
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