きっと貴方は死神

2/6
前へ
/6ページ
次へ
 朝起きて、改めて考えてみると、昨日のことは夢であったように思えた。日々の激務が幻覚を見させたのだろう。そうやって自分を納得させることにした。  今日は快晴だ。朝ご飯は、納豆、白米、お味噌汁。納豆ご飯にして、掻き込んでいると、ふとあることを思い出した。  玄関の大豆のことだ。私の妻は行事とか、祭り事だとかを嫌う。それは、節分も然りで、外に豆を投げるなど子供のやることだという。しかし、なぜだか鬼という存在は信じ切っていて、物凄く怖がる。  ゆえに、我が家では年がら年中、玄関や窓などの近くに大豆を盛るようにしている。盛り塩ならぬ、盛り大豆である。一ヶ月に一度ほど大豆を交換するのだが、今回は気づけば一ヶ月半が経過していた。そろそろ交換しないとまずい。俺は常備してある大豆を窓の外の器と玄関の器に盛り変えた。これで良しと時計を見ると、もう家を出なければいけない時間だ。  俺は慌てて玄関の扉を開けて外に出た。扉に鍵をかけて振り返ると、家の植え込みの前に女性が佇んでいるのが見えた。昨日の女性だ。最悪である。昨日の出来事がフラッシュバックする。一気に血の気が引いた。  俺は気づかれないように、そ~っと女性の脇を通ろうとした。しかし、通り過ぎたあたりで、後ろから声をかけられてしまったのだ。 「ねぇ、私イメチェンしたんだけど、どこが変わったかわかる?」 振り返ると、女性の鋭い目つきが突き刺さる。本能的に正解しないと殺されると思った。 「えっと……」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加