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さて、約束の日曜日。Glegleマップに赤ピン立てた画像を寄越した虎須くんに、迎えに来いよと内心不満をこぼしつつ。
念のため駅前で買った手土産を片手に、お母様もご在宅という虎須くんの一軒家のインターホンを押した。その瞬間ドアが開く。
現れたのは、色褪せた水色だった。
「よう手嶋。いらっしゃい」
いや上下デニムかよ!
虎須くんの服装を一目見て口から出かかったツッコミを間一髪で飲み込んで、「出てくんの早すぎでしょ」と無難な指摘に変換した。
「ちょうど玄関の前を通りかかったからさ」
と嘯く虎須くんの声を素通りさせつつ、私の視線は彼の頭のてっぺんからつま先までを五往復した。
白Tにジージャン、下はヴィンテージっぽい極ワイドデニム。腰にはシルバーのチェーンがぶら下がっている。シルエットはニッカポッカを穿いた作業員のよう。
なんでこのチョイスなんだろう……どんな感想を抱けばいいのか困惑し、私はスルーすることにした。
「おじゃまします。お母様は?」
虎須くんは心底驚いた顔をした。
「ええっ、母ちゃんなんていいから。顔見せたらぜってー根掘り葉掘り聞いてくるぜ」
「菓子折りも持ってきたから、ひとことご挨拶したいんだけど」
「いま洗濯してるっぽいし、いいから部屋いこう」
「えー、ちょっとぉ……」
制止も聞かず、虎須くんはすたすたと家の奥に行ってしまったので、私は脱いだ靴をあわてて揃えて後を追いかけた。
リビング横の階段をのぼると、虎須くんが突き当たりのドアに手を掛けていた。ちょっと期待。この部屋の中が、虎須くんのあの自信みなぎる2人きりのシチュエーションなのだろうか。
さあ、虎須くんが扉を開けると――
広い部屋の床にごろ寝してマンガを読んでる小学校高学年くらいの男の子がいた。
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