虎須くんのポケットの中

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「もう無理ーーー!!!」  どこまで走っても、景色は変わらなかった。私は足を止めて、失意に押し潰されてへたり込む。 「おい、手嶋(てしま)! 諦めてしまうのか?」 「なにそれ、駄洒落のつもり?」 「どこかに出口はあるはずだ」 「もう走れないよ……きっと私たちはこのまま、ここから出られなくて……うぅ〜」  さめざめと泣き始めた私の背中をさすりながら、虎須くんはうんうん唸っている。 「チェーンの代わりになる長いものがあればなあ」 「ここには菓子折りしかないよぅ、うぅ〜」 「こうなったら仕方ない、俺が一肌脱ぐぜ!」  高らかに宣言して、虎須くんがバッとジージャンを脱ぎ捨てた。 「な、なに?」  そして白Tシャツもズバッと脱いだ。 「キャーーーーッ!! なにしてるの!? マジでパンツ一丁だよっ」 「大丈夫だ、靴下は履いている」  戯言をのたまう虎須くんを直視できず、私は両手で顔を覆った。 「服……服着てよっ」 「ああ、着た」  おそるおそる指の隙間から見ると、虎須くんはジージャンパンツに戻っていた。ご丁寧に前ボタンは閉めてあり、手には白Tをぶら下げていた。  素肌にジージャン、青色のトランクス。いっそのことジージャンがノースリーブであれば、お笑い芸人さんみたいでワイルドだったのではないだろうか……
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