138人が本棚に入れています
本棚に追加
全裸&HP満タン状態でババーンと登場した俺を迎えたのは、理人さんの高速尻ずさりだった。
すでに最強奥義発動可能レベルまで起ち上がった俺のそれを、恐怖に慄いたふたつのアーモンド・アイが見つめてくる。
「な、なんで勝手に勃ってんだよ!?」
や、勝手にじゃないし。
「理人さんのこと考えてたからに決まってるでしょ」
「え……」
壁際まで一気に緊急待避した理人さんが、ぽかんと口を開ける。
俺は、膝でベッドを踏みしめながら理人さんに近づくと、頬に手を伸ばした。
「さ、佐藤くん……」
(俺のこと考えてたって、ほんとに……? もう、俺のこと、嫌になったのかと思った……)
なるわけないし。
「あ……んっ」
(よかった……また、触ってもらえた。キス、してもらえた)
「んっ……っふ……」
(き……もちいい……あったかい……っ)
唇をくっつけ合うだけだった口づけが、少しずつ深くなっていく。
「あっ……!」
パジャマの中に手を入れると、理人さんの身体がびくんと跳ねた。
肌を冷やさないように気をつけながら、引き締まった腹の緩やかな凹凸を手のひらでゆっくりと味わう。
(初詣の神様、『今年も佐藤くんと一緒にいられますように』ってお願いしたのに裏切りやがってこのやろう! ……とか思ってごめんなさい)
プッ、なんだそれーーって、え?
初詣のお願い……?
「あっ!?」
ま、まさか、このテレパシー現象の原因はソレだったのか……!?
大晦日の前日に実家に帰省した俺たちは、年が明けると同時にみんなで初詣に向かった。
理人さんにとって夜中の初詣は初めてだったらしく、すっかり興奮した理人さんは閉じる寸前だった目を蘭々にしてはしゃいでいて、甘酒がふるまわれると、子どもみたいにキラキラした瞳で喜んだ。
すでに伸び始めていた参拝者の列に並んでいたら地元の同級生一行にばったり会ったけれど、暗かったから、理人さんの手と俺の手が繋がっていたことには、気づかなかったんだろう。
彼らは「東京でできた友人だ」という俺の言葉を疑うこともなく、「また連絡する」と言い残して去っていった。
もしかしたら、そのとき、理人さんはすでに不安を感じていたのかもしれない。
俺が、「恋人だ」と紹介しなかったから。
不安にさせてごめんなさい。
でもね、理人さん。
理人さんが『今年も佐藤くんと一緒にいられますように』と唱えていた隣で、俺だって、『理人さんがもっと俺のこと好きになってくれますように』と願っていたんですよ。
最初のコメントを投稿しよう!