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ドアを開けると予感は的中した。ふらりと立ち上がる影。タジマが悲鳴をあげた。
「よぅ、久しぶり 」
引き裂かれた腹から、腑が溢れている。ずるっと引き摺られる腸。
その手にはスマホがぶら下がっていた。きっとワタセの物だ。
「そんな姿になってもアイツのことが好きかよ? お前のことを守れなかったアイツを…… 」
守れなかったのは俺も同じだ。誹謗なんて格好悪いことしたくないのに。
タジマが信じられないモノを見る様に頭を振る。
「ハルカじゃない。こんな化け物、ハルカじゃ…… 」
「何言ってんだ?お前」
俺のハルカをーーー。
その時、ポトリと何かが下に落ちた。それは一緒に買った揃いのお守りだった。
まさか、取りに戻ったというのはコレか? 俺はとうに捨ててしまっていたのに。
「馬鹿だよ、お前 」
こちらに手を伸ばすハルカの頬に光るものが伝っているのは見間違いだろうか。俺は自惚れてもいいのか、ハルカ?
「ゔ……、あ、り゛ょ…… 」
「……俺はずっと、お前が好きだったんだぜ?。好きで、大切で、心底惚れてた 」
ハルカ、俺がお前に最後にしてやれること。
「助けてやれなくてごめんな。でも、俺がお前の事、救ってやるから 」
ハルカの顔が霞んで歪んで、よく見えない。
俺はハルカの頭部に思い切りバットを振り上げた。ドゴッという音ともにバッドがめり込む、嫌な感触が手に伝わる。
『リョウちゃん 』
いつものハルカの俺を呼ぶ声が、俺の耳に聞こえた気がした。
そして、俺は真実を知るためにグリップをしっかりと握り締める。
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