もう一度、君と手を繋ぎたいんだ

2/10
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
   『やだなぁ。ウチのお母さんとリョウちゃんのお母さん、筒抜けなんだもん 』    へらっと笑いながらの声に、イラッとした。   『優しそうだったし、こんな私でも好きだって言ってくれたから、いいかなっ……て』  そんなんで、他の男のもんになるんかよ。  「あぁ、そうだな。お前なんかを好きになってくれたんだから、精々その奇特なカレシ、大事にしろよ 」  裏切られた気がして、そんな憎まれ口を叩いた。自分は言わなくても分かっていると、想いを伝えることさえしていなかったくせに。  ギリギリと胸が締め付けられる様に痛む。  「俺達、もう2人で会わねぇ方がいいな 」  『……っ、どうしてそんな事、言うの?』  「ソイツが嫌な気になるだろう? 」  『リョウちゃん、そんなの、私、いや、だよ 』  震える声で泣きそうなことが分かった。ふざけんな、泣きてぇのはこっちの方だ。  「……とにかく、お前。もう俺に連絡してくんな 」  『リョウちゃ……っ』  全部を聞く前に電話を切った。そして鞄に付けていたお守りを引き千切ると、ゴミ箱に投げ捨てた。  スマホを拒否にしていたら、ある日、アイツが家の前で待っていた。話を聞いてと言うアイツに、「迷惑だから、2度と来るな」と怒鳴った。今、思い返せば、子どもかと思う様な態度。だが俺はあの時、ハルカの顔を見るのも、声を聞くのも辛かったのだ。  アイツと話したのはそれが最後だった。    校内の狭い廊下。向こうから唸り声を上げて死人がゆっくりとやってくる。前に伸ばした両腕と濁った瞳。映画やゲームに出て来るゾンビそのものだ。その後ろにもゆらりと影が見えて、俺は手に持つバットのグリップを握り直す。    ハルカの高校に来るのは初めてだ。中がどういう造りになっているのか知らないから、()が悪い。ゴクリと喉が鳴る。  だけど、ここに
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!