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朝礼台横に置いていたエナメルバッグを拾い、逃げ惑う生徒達と一緒に昇降口に入ると、鞄の中から着信音が聞こえた。取り出したスマホに表示されている知らないナンバー。眉を顰め足を止めると、見知らぬ生徒がドンと肩にぶつかりながら俺を追い越して行く。
いつもの自分なら出なかったろう、だが状況が状況だ。妙な胸騒ぎに画面をスライドする。
「もしもし? 」
『……リョ、ちゃん?』
か細く、震える、間違える筈の無い幼馴染みの声。
「ハルカか?! 」
『リョウちゃぁん…… 』
ハルカが泣いている。
『怖いよ。人が人を、食べてるの。怖い、怖いよ 』
「ハルカ、今どこにいる? 」
『学、校。いっぱい、いるの。嫌だ、見つかっちゃう 』
潜めた声に、ハルカが隠れていることが分かる。ハルカの学校もウチと同じことになっているのだろう。いや、ハルカの学校の方が市街地に近い分、先に襲われていると思われた。
『私も、死んじゃうのかな。でも、あの人達みたいには、なりたく、ない。』
「馬鹿っ!変なこと言うな! 」
グスッと洟を啜る音がする。
『リョウちゃ……、会いたい。最後に、一目でいいから、会いたいの。ずっと、会いたかっ…… 』
「分かった、直ぐに行く。お前んとこにいくから、待ってろ 」
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