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ズキッと胸が痛む。何故、ハルカと離れたのだろう。幾ら他の奴が好きになったのだとはいえ、ハルカを守るのは小さい頃から俺の役目だったのに。俺の気持ちはずっと変わっていないのに。
『リョウちゃん、もう怒ってないの? 』
「怒ってないよ 」
『ホント? 』
ふわっと明るくなるハルカの声。懐かしくて泣きたくなる。
「俺が嘘付いたことあるか? 」
『リョウちゃん……、っ!? 』
スマホの向こう側で、ヒュッと息を飲む音がした。ハルカの声に恐怖が混じる。
『や、やだ……。来ないで、来ないでっ!! 』
続く、固いモノに打ち付けられる激しい音。思わず耳をスマホから離した。
「ハルカっ?!」
『リョウ……んっ! た……け、……けて…… 』
突然、ハルカの声が途切れ途切れになる。電波がおかしい。
「ハルカっ、ハルカっ!! 」
『……た、い。……たいよ、助け……、……ちゃ…… 』
「ハルカっ、大丈夫なのか?おい…… 」
『も……、だめ。……たし、た……れ、てる…… 』
「駄目とか、言うなよ! 」
返事はない。
「ハルカっ!!」
少しの沈黙の後、『ーーーーーーりがと、リョウちゃん 』と小さな声が聞こえて通話が切れた。
「おいっ!おいっ、ハルカっ! ハルカっ!!」
掛かって来た電話番号に掛け直すが繋がらない。くそっと毒吐いて、俺はエナメルバッグを斜め掛けにすると人の波を逆に歩き出す。
「リョウゴ!? お前、どこにいくんだよ!! 」
背後からキヨマサの声がした。
「悪い、俺行かなきゃ 」
「行くって、どこへ?! 先ず安全を確保して情報をーーー 」
「待ってんだよ、ハルカが 」
肩を掴むキヨマサの手を振り解き、ポケットの中の自転車の鍵を確かめると、俺は外へと飛び出した。
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