もう一度、君と手を繋ぎたいんだ

6/10
23人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
 どうしてこんなことになったのか、分からない。しかし確実に世界は変わってしまった。  市街地に近付く程に国道は沢山の車で溢れていた。先の動かない渋滞にクラクションが鳴り続ける。その横を自転車で抜けながら、そんなことをしても無駄だろうと思った。途中、激しく揺れる車の中から、叫び声と窓の内側に飛び散る血を見たからだ。  ここに来るまでに、身を持って思い知った。ヤツらは、老若男女、大人、子ども、相手が誰であっても関係ない。只々、己の食欲を満たしているだけだ。  至る所で行われている凄惨な食事を見る度、吐き気が何度も込み上げる。  それでも逃げる訳にはいかない、ハルカに会うまでは。  知らず知らずに喉がゴクリと音を立てた。次のヤツらに準備し、バッドを握り直す。その時だった。  「アンタ、《オオガミ リョウゴ》? 」  声のした方を見ると、教室の下の地窓から派手な髪色をした女生徒が顔を覗かせていた。  「あぁ? お前誰だ? 」  「ハルカの友達 」  女生徒の言葉に思わず声を張る。  「……っ?! ハルカがいるのかっ?!! 」  「静かにしなさいよ! ヤツらを興奮させないで! 」  兎に角、中へ入れと促され、先に荷物を押し込むと俺は教室内へと滑り込む様にして入った。女生徒は直ぐに引き戸を閉めると側にあった机を倒して壁を作る。地窓は見えなくなった。  前と後ろの引き戸も、机や椅子でバリケードが築かれていて出入りが出来ない様になっている。  
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!