忍びの掟よりも目立ちたいっ!

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 これには咲耶の祖父である甲賀の(クラン)里長(リーダー)の岩爺も驚くばかりだった。 幼い頃から、咲耶に忍術を教えていた師匠(コーチ)のコンガも「もう教えることはない!」と、免許皆伝を許すのであった。  二人共、甲賀の(クラン)は安泰であると信じてやまなかった。 心技体、咲耶は全てが完璧であると思われた。しかし、心の教授はされなかった。  厳しい修行の毎日は心が乾く日照りも同然、そんな中に降り注いだ娯楽は旱天の慈雨そのもの。咲耶の心を潤いに満たすのであった。 甲賀の(クラン)にやっとのことで敷かれたネット回線はパンドラの箱、咲耶はネット動画で見たインフルエンサーにすっかり心奪われてしまい「あたしもインフルエンサーになりたい!」と考えるようになった。 当然、岩爺は大激怒。普段は目に入れても痛くない程に可愛がってはいるが、咲耶は甲賀忍者の希望。インフルエンザだかインフルエンサーだか何だか知らんが、そんなものになることは許さんと怒髪天を衝くのであった。 甲賀の(クラン)全てに轟く程の雷を落とされた咲耶であったが、インフルエンサーになりたいと言う憧れを止めることは出来なかった。  思い立ったが疾風迅雷! 咲耶はその日のうちに旅支度を風呂敷包みに纏め、「わたし、忍者やめてインフルエンサーになります」と書き置きを残し、甲賀の(クラン)から逐電してしまった。  さて、忍者には鉄の掟がある。(クラン)は今でも時の権力者より指令を受ける立場にあり、明暗問わずに「知られたくない情報」の塊である。 それが外に漏れることがあれば信用問題。時の権力者の身の破滅、何よりも(クラン)の崩壊の危険性すらも孕んでいる。 その守護のために「抜け忍」、つまり(クラン)を抜けることを大罪とし、(クラン)の者での抹殺が定められているのであった。
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