甲賀忍者から抜け忍になった咲耶が刺客の抜け忍ハンターを返り討ちにしてバズって忍者系インフルエンサーになっていく話

忍びの掟よりも目立ちたいっ！

　見た目の解説が終わったところで、SNS公開用の物撮りに入ることにした。これまで行っていたのは「クリプトニンジャ咲耶ちゃんねる」の動画撮影である。
物撮りも勿論バズる要素を忘れない、綺麗に映るような物の撮り方も勿論把握している。
簡易的なレフ板を置き、物の明暗をハッキリクッキリとさせて見栄えを良くすることはインフルエンサー達の間では最早常識。
咲耶であればスマホの付喪神に「お願い」と言うだけで可能なのだが、こんな横着をしては閲覧者・視聴者に「魂」が伝わらないと思い、自分で出来ることは自分でやろうと誓いを立てているのであった。
この辺りは厳しい十六年の忍者の修行で身についた真面目さだろうか。

　咲耶は食レポに入ることにした。再び自撮り棒にスマホをつけ、自分の顔が映るように向けた。
「じゃあ、いただきまぁーす」
咲耶は一瞬だけ自撮り棒から手を離し、合掌を行った。
食材と菓子職人(パティシエ)への感謝を黙想で述べた後、再び自撮り棒を手に取った。
自撮り棒を手から放し、床に落ちるまでの刹那の間のことである。
　咲耶は塩スイカカフェオレシュークリームを頬張った。勿論、購入した店舗の屋号(ロゴ)の描かれた包み紙がしっかりと映るようにすることも忘れない。
「スイカには塩！　皮にふりかけられたお塩とスイカクリームの甘味をより際立たせますね！　ずっとスイカの先端の一番甘いところの味がします！　切られたスイカの果肉もシャキシャキして歯応えも抜群です！」
このような食レポを行いながら、咲耶は塩スイカカフェオレシュークリームを食べ終えた。