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さて、帰りますか。咲耶が立ち上がりながら包み紙を折り畳んだ瞬間、背後より空を切る音が聞こえてきた。
よいしょっと。咲耶は軽く足を上げてそれを躱した。飛んできたのは四方手裏剣だった。四方手裏剣は先程まで咲耶が腰を下ろしていた場所に突き刺さった。
「最低限の動きで手裏剣を躱すとは…… 流石は里始まって以来の天才と呼ばれた咲耶。これ程の才能を持ちながら抜け忍として抹殺しなければいけないのは惜しい……」
それを言うのは全身を黒装束に包んだ忍者だった。この屋上にはこんな忍者達が既に十人集まっており、各々背中に背負った忍者刀を構えていたり、手に持った手裏剣を打たんとしていた。
彼らは抜け忍の咲耶を抹殺するために甲賀の里より命令を受けた刺客、抜け忍ハンターである。
咲耶はやれやれと溜息混じりに肩を竦めた。
「もう何回目? もう二十回ぐらいこうやって襲撃して来てるけど、毎回あたしが撃退してるよね? 諦めるって言葉知らないの?」
忍者は口角を上げながら述べた。ただ、過去の襲撃を失敗したことを指摘されているせいか、その顔には悔しさが滲み出していた。
「忍者に『諦める』と言う言葉が無いことは忍者であったあなたがよく知っておろう! この抜け忍めが!」
忍者は一足飛びで咲耶の元へと斬り込んだ。咲耶は自撮り棒で引き抜かれた忍者刀を凌ぎ受け止めた。
重甲な金属音が辺りに響くと同時に、咲耶は忍者に述べた。
「踏み込みが甘い! ビターチョコレートぐらいの甘さになるまで出直して来なさい!」
咲耶は自撮り棒を振り抜くと、忍者は吹き飛ばされた。その手はブルブルと痺れ震えていた。
忍者は思う「咲耶の太刀は重すぎる」と。そして、それから間もなくに前のめりになって倒れてしまった。咲耶は自撮り棒を振り抜いた一瞬で気絶させる一撃を早業で忍者の頭に加えたのである。
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