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忍びの掟よりも目立ちたいっ!
「今日は多いねぇ」
咲耶(さくや)は高いビルの屋上より、麓を見下ろした。
麓に広がるは都会の雑踏、学校帰りや会社帰りの甲賀シティ民が黒山を作っていた。
その中に混じるは咲耶に対する殺意を秘めた刺客達。
咲耶は刺客に追われる立場にある、つまり「抜け忍」である。
咲耶であるが、十六歳になるまで、甲賀忍者として厳しい掟と修行の中に生きてきた。
この国の忍者の歴史は古く、かつて聖徳太子に仕えていた志能備という工作員を元にする。彼らは全国へと散らばり、それぞれの地を里とし、忍ぶ者として忍者を自称するようになった。
忍者達は子を産み、忍者として育て、時の権力者から下った指令を完璧に遂行し報酬を受けることで忍者は現代まで絶えることなく生き続けた。
しかし、遠い昔に忍者の里同士での覇権争いが起こってしまったため、多くの里は滅び去ってしまった。
生き残っているのは「甲賀」「伊賀」「風魔」「雑賀」の四つのみである。
咲耶は甲賀の里に生まれた天才忍者である。甲賀忍者始まって以来の天才、いや、四つの里の中でも不世出の天才と呼ぶに相応しかった。
身体能力は全てにおいて傑出。筋骨隆々とした屈強なる力自慢の忍者を超える剛力を誇り、跳躍力も一跳ねで空を飛ぶ荒鷲を鷲掴みにし、足の速さも馬と平然と並走し何十何百里を走ろうとも息一つ切らすことはなかった。
使う忍術は口寄せの術なのだが、動物を呼び出して使役すると言う忍者が行うそれを凌駕したもの。なんと、天然自然の使役が可能なのだ。
火を呼び出しての火山噴火の如き火遁の術、水を呼び出して荒波を立たせる水遁の術、雷を呼び出して雷霆を轟かせる雷遁の術、氷を呼び出して吹雪を起こす氷遁の術などを平然と行うのである。
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