何もない私と何かある彼女

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「うう……好き……」  ぽろぽろと涙を落とす情緒不安定な私に、華ちゃんがびっくりして言った。 「え、何? 好きって、仕事が?」 「ううん、華ちゃんが好き……」  涙越しに見える彼女は、「えぇぇ〜〜?」と照れ笑いだ。 「美香ちゃん、今、私には何もないって言ったよね? なのに好きなの?」 「うん。優しいところとか、この手とか好き」  自分のよりもしっかりとした手を握り返すと、華ちゃんは盛大に顔を赤くした。 「きゃ〜! もう、物好きな子ねぇ」 「あと、タトゥーも綺麗で好き」 「これは若い時に勢いで……。あはは、私も素の美香ちゃん、可愛過ぎて大好きだわ。高嶺の花だって思ってたけど、両想いだったのね~」 「えっ」  驚く私に、華ちゃんはお日さまのような笑顔で言った。 「また二人で会いたいな。これからは恋人として。いいでしょ?」 「……断る理由がないよ。よろしくお願いします」  私も笑って涙を拭う。  何もないなんて言いながら、たくさんのものを持っている華ちゃんのことを、もっともっと知りたかった。
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