9人が本棚に入れています
本棚に追加
「うう……好き……」
ぽろぽろと涙を落とす情緒不安定な私に、華ちゃんがびっくりして言った。
「え、何? 好きって、仕事が?」
「ううん、華ちゃんが好き……」
涙越しに見える彼女は、「えぇぇ〜〜?」と照れ笑いだ。
「美香ちゃん、今、私には何もないって言ったよね? なのに好きなの?」
「うん。優しいところとか、この手とか好き」
自分のよりもしっかりとした手を握り返すと、華ちゃんは盛大に顔を赤くした。
「きゃ〜! もう、物好きな子ねぇ」
「あと、タトゥーも綺麗で好き」
「これは若い時に勢いで……。あはは、私も素の美香ちゃん、可愛過ぎて大好きだわ。高嶺の花だって思ってたけど、両想いだったのね~」
「えっ」
驚く私に、華ちゃんはお日さまのような笑顔で言った。
「また二人で会いたいな。これからは恋人として。いいでしょ?」
「……断る理由がないよ。よろしくお願いします」
私も笑って涙を拭う。
何もないなんて言いながら、たくさんのものを持っている華ちゃんのことを、もっともっと知りたかった。
最初のコメントを投稿しよう!