何もない私と何かある彼女

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「痛っ!」  ぼんやりしていたら、スマホが手から滑り落ちて、胸元を直撃した。痛む箇所を擦りつつ、スマホを手に取ると、 「あっ!」  私は自分の失態に気付いた。  どうやらスマホを落として拾う間に、トーク画面に切り替わったらしい。 『さ』  その上、謎の一文字を華ちゃんに送ってしまった。 「うわ〜ヤバい、取り消さないと」  しかし、その一文字メッセージにはすぐに既読が付いて、 『サイコー?』 『サンキュー?』 『何だろ、どした?』  華ちゃんから『さ』の意味を問う返信が来てしまった。 「うわぁ~……」  恥ずかしいけど、素直に謝罪しよう。 『ごめん、間違えて送っちゃった…元気?』  すると、 『昨日の夜会ったよね笑』 『今日は店休みだから、近所のスーパーでボケっとしてる!!』  ボケっとしてる割には元気いっぱいのメッセージが返ってきた。 『私も休み〜』  何気なく返すと、 『じゃ、スーパー来る?笑』  予想外の展開になって、ドキッとした。  最後に「笑」が付いてるから、冗談かもしれないけれど。 『じゃ、行く〜!笑』  私もくだけた調子で、内心ではかなり緊張しながら返信していた。
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