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三禅寺児養学校
「まだ着かないのかな」
「ちょっと楽しみ」
「一緒のクラスだといいね」
そんな声が飛び交うバスの中で、翠はウトウトとしつつ、窓の外を眺めていた。田んぼの中の一本道。少し窓を開ける。夏の青田が爽やかな香りを匂わせビュンビュンと通り過ぎていく。
三禅寺児養学校ーーーーそれは、今バスが向かっている「保護者のいない子どもたちが新しい人生を始める場所」。
(今年の新入生は137人だっけ。)
出発前にセンターで聞いた説明会の内容を思い出す。
三禅寺校は日本に五校ある児養学校の一つ、中部地方を担当している学校で、全員が寮で生活している。
五つの集合場所を通り進むバスは、ちょうど今、五つ目の集合場所に止まった。子供は一人しか乗ってこない。
(137人目か)
その子は社内を見渡し、翠を見た。
「隣いい?」
「あっ、はい」
同じ年齢なのに大人びた子だ。薄い色の髪は肩までの長さがあり、おくれ毛を三つ編みにしていて、よくアイロンのかけられた襟付きの黒いワンピースを着ている。
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