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プロローグ
「ふざけんじゃねえよおおお!!」
いつもの朝。今日はやけにイライラしていた。そして、つい、叫んでしまった。
・・・。
うん、すっごいくらいの空気の悪さ。そりゃそうだよね。授業中に叫ぶ女の子、皆絶対引くよね。
「美咲さん、大丈夫です。先生はそんなんで怒りませんから。」
皆なぜか背中に冷や汗をかいた。先生が表情は笑っているが目が全く笑っていないことに気付いたからだ。
「す、すいませんでした・・・。」
私は慌てて謝った。
四葉美咲(15)高校生になったばかりの女子高生。初っ端から叫んで怒られるオバカモノである。今日も、嫌な感じしかしない。
「美咲!さっきどうしたの?」
休み時間。友達のアスミが私の肩をポンと叩いた。
「あ、ええと。ス、ストレスかな。ちょっとさっき爆発しちゃって。」
適当にワケをつける。もちろんそんなことではないけど。
「うん!わかるよ。思春期とか反抗期とか?私もなったよ。」
アサミが単純でよかったわ。何も疑われずに済んだよ。
ホッと息を吐きながら私は頭の中で考えた。
私は最近ホントに困っている。「何が?」って自分に問う。それは、私のヒミツに関係する。
身内しか知らない私のヒミツ。それは。
Copy imitate
通称、コピー能力。
この言葉から察して欲しいけど、私には超能力がある。
相手の特技などをコピーしてそれを自分のものにする能力。
このせいで、私の高校生活は不安定ってワケ☆まじ、萎える。友達にもこの能力のこと、打ち明けれないじゃん!ねー。
こんな超能力さえなければ、私、普通の高校生活送れたのにーーーー!!身近に超能力のお友達がいれば、まだ心穏やかなのに。そりゃ、いるワケないじゃん。
「きみに、これを。」
高校の下校中。帰り道変な男の人に会った。灰色の髪をした男の人。服は、なんか洋風チック?な服。一体どこ出身なの?
「君は、素晴らしい能力を持っている。この学園で伸ばしていただきたい。」
は?何言ってんの?素晴らしい能力ってもしかしてコピーのこと?何で知ってんの?新手のストーカー?ええっ。
「あの、どういう・・・。」
顔を上げるとあの男の人が消えていた。
「は?へ?」
いや、いきなり現れていきなり消える。そして意味深な言葉。とりあえずこの手紙を読もう。それにしても、あの人一体何者?流石に足、速すぎない?
パサッ・・・。
公園のベンチに座って手紙のシールを外して開く。
「サイキッカー学園への招待」
パサッ・・・。
その言葉が目に入った途端に紙を閉じる。あの、男の人もしかして遅れた厨二病?サイキッカー学園なんて存在しないわよ。何言ってんのよ。あの人頭おかしいんじゃないの?どういうことよ。
けど、一応続きも見とこう。
「きみの能力をぐんぐんと伸ばしていって世界で通用する子供に育て上げる。」
うっわ。すぐ閉じたい。超閉じたい。ありえんもん、こんな手紙。
「ぜひ、我が学園へお越しください。 理事長」
お越したくないです。行きたくないです。(泣)
いっや、しかし、超すっとこどっこいツッコミ満載の手紙でしたわ。何なのよこれ。これも運命の一つ?嫌な運命ね。
私は、その手紙をぐちゃぐちゃにして、自販機の隣にあったゴミ箱に捨てた。
「あのさ・・・ちょっと待ってよ。ここどこ?」
私は寝ていたの?気付いたら知らない場所にいた。超オシャンティーな部屋。大きいシャンデリアや赤いフワッフワのソファ。一体どういうこと?ここはどこなのよ。
「いや〜ご入学嬉しかったです。美咲さん。」
へ?もしかして、あの手紙?私心の中で言ったよ。『お越したくないです。』って。勝手に入学判定されてる。酷すぎる。
「あの。私、入学するとは・・・。」
「きみの能力は最高だ。ぜひこの学園で学習してほしい。」
やばい。すっごい完璧なスルー。極めているところ間違ってると思う。
「紹介します。私がこの学園の理事長です。」
へー。だから、こんな豪華な部屋にいたのね。・・・って。
私、勝手にここに連れて来られてない??
うわー!!この人、犯罪おかしてるよ!誰かタスケテー!!(泣)
「はあ。全く。素晴らしい能力を持っているのに。そんな心が汚れてるなんて。学園の恥です。『犯罪おかしてるよ!』って・・・。」
は?何で?この人私の思考読めるの?怖すぎる。なぜなの。
「ここはサイキッカー学園ですから。」
あ、まぁ・・・そうか。先生も能力持ってるってことね。色々と怖い学園ね。ホント。また思考読まれたみたいだし。
「それより、私、入学するなんて言ってないわ!家に帰る!」
私が声を張り上げた。
「あ、ちゃんと、両親からは許可を取ってはおるから。」
は??
「マ、ママが?なんて言ったの?」
「ええとねぇ・・・。わしが『お前の子を数ヶ月こっちに預けてくれれば金をやる』って言ったら『どうぞ、どうぞ!お金をください!』って言われたぞ。」
ママ、金で買収されたの!?私より金が大切!?ひどいよ!私の家族色々と!!
「パ、パ、パパは??」
「あ、『どうでもいい』って。」
パリーーン
私の心の壊れた音が頭の中に響く。こんな残念な女子高生、いる?
「メンタルブレイク、早いのぉ・・・。」
理事長が「ほっほっほ!」と笑う。
「ああ、もういいわ。どうせ私を家に入れてくれることないし。この学園にいてやるわよ。」
はぁ、とため息をつきながら言った。
「んじゃ。改めて、ご入学・おめでとう。」
理事長室でしわがれた声が響いた。
四葉美咲(15)、高校生になったばかりの女子高生。
15年生きて初めてこの瞬間、人生の終わりを悟った。
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