衝動

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

衝動

本当はね、こんなこと言っちゃいけないんだけど、でもねどうしても伝えなきゃ、違う伝えたいって思ったの、どうしたいとかどうなりたいとかそんなんじゃなくただ、だから、ごめんね、ずっと前から好きだったの 堰を切ったように、しかし僅かに震える声で思いの丈を言いきったとき彼女の背中で春の風に砂埃が巻いあげられはるかその向こうでは歪(いびつ)な夕日がビルの向こうに沈みかけていた。ずっと目も合わせず俯いたままの彼女。ほんの少しだけ無言の時が過ぎ彼女は背を向け俯いたまま夕日に向かってズンズンと歩いて行った。僕はなんて答えたらいい?僕も同じ気持ちだと言えばいいのか?彼女の左手の薬指でいつもキラキラと光っていたダイヤモンドリングは今日は外されていた。僕の心の中の天使と悪魔が会議を開くその前に僕の本心が遠去かる彼女の名を呼んでいた。 みゆき! その声に立ち止まるみゆき。僕はみゆきに向かって一直線に走り出していた。そっと振り返ったみゆきはなぜか泣いているような気がした。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!