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恨み
『なぁ、美恵子、お前って本当に嫌な奴だったよな。俺、高校の時の事、一生忘れないぜ。』
巧は高校の時に執拗に巧を苛め抜いた美恵子の事を26歳の今でも恨みに恨んでいた。
巧はそのいじめで心を病み、しばらく家からも出られなかった。
学校側でもそのいじめは問題視され、美恵子の家からと美恵子から、そして、一番ひどいいじめの手下として動いた晴夫からも謝罪はあった。
だからと言って、心の傷がすぐに癒えるわけでもないし、いじめの事実が消えるわけでもない。
『もう、いじめのことは忘れて、前を見て歩きなさい。』
両親は勝手なことを言うが、いじめられたことを忘れるなどできなかった。
いじめは陰湿かつ、大胆に行われた。
美貌を誇る美恵子の手下みたいな女子たちからは、教室のホワイトボードや、巧の机への落書き、教科書の破損、ノートの紛失などあらゆる小さな嫌がらせが行われた。
美恵子と付き合っていた晴夫は空手をやっていて、力も強かったし、その頃、まだひょひょろだった巧を面白いように小突き回した。
男子トイレで水をかけられたりするのはまだましだと思える事件が起こったのは、高校3年もあと少しで終わりと言うころだった。
巧が引きこもる決定的ないじめは、教室で巧を男子で押さえつけて素っ裸にして制服や下着までも窓から放り出したことだった。
女子もいる教室で全裸にされ、手足を押さえつけられ、クラス全員の眼に裸をさらされたことが決定打となり、巧はそれきり学校には戻らなかった。
さすがにその騒ぎは隣りのクラスへも知れ渡る事となり、学校全体の問題となった。
美恵子と晴夫は退学処分になった。
巧は自宅に届けられたプリントを提出し、出席日数は学校側で配慮してくれて、何とか高校卒業の資格はもらえた。
何故、美恵子が巧をそんなに執拗にいじめたのかは誰にもわからなかった。
巧は特に目立つ生徒ではなかったし、誰かに恨まれるような性格でもなかった。
ただ、美恵子は自分の美貌に全く興味を持たない巧を面白く思わなかっただけだった。
巧はそんな理不尽な理由でいじめられたことを、謝りに来た美恵子から聞いて、ますます恨みを募らせた。
美恵子と晴夫はあの事件の後は付き合いもやめ、それぞれの家がいたたまれなくて別の土地に引っ越していったので、今、どこにいるのかはわからなかった。
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