Never Turn

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 石粉粘土で作りだした人形の顔に蒼いグラスアイをはめ込むと、深い色を湛えた瞳が正面から私の瞳を覗き込まれているような気分になった。顔立ちを調整する前の人形は無遠慮に私の顔をぎろりと見据えてくる。  私が作り出した造形のはずなのに、そんな人形の視線に息が苦しくなった。動悸を抑えるようにしながら震える手で人形の顔を整えていく。  目指している顔の形がある。記憶の中の人形の顔に手元の人形の顔を寄せていく。顔が近づけば近づくほど肺が重い空気で満たされていき呼吸が苦しくなる。  もう少しで人形の顔が完成するというところで、頭の中に思い描いていた記憶の中の人形の首がグネリと折れた。それまでどうにか人形を作り上げてきた手が凍り付いたようにピタリと動かなくなる。  いつもそうだ。  人形を思い浮かべて作業を進めているうちに、その人形にまつわる記憶がフラッシュバックして私の手を縛り付ける――
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