絡まる思い 〈吉田〉

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絡まる思い 〈吉田〉

 今夜、池田屋で会合がある。 僕は、怪しまれないように普通の武士を演じて池田屋へ向かっていた。 が、何やら騒がしい。 「うるさいんだけど。」 池田屋の二階に向かって言い放つ。 すると、 「おお!稔麿!遅いぞ!」 「予定より皆さん数刻早いですね。別にいいですが。」 宮部さんが顔をひょこっと出した。僕は二階に上がりながら答える。 「なんだ、稔麿。元気がないな。まあいい。古高奪還についてだ。」 宮部さんにも覇気がないことを咎められてしまった。流石に不味い。 尊攘志士、というのは議論好きが多い。水戸はもちろん長州もだが宮部さんの肥後も似たようなものだ。土佐はどちらかというと国を思う心だけで語っているような感じはあるが熱くなりやすい質のやつが多いのは確かだ。今日は特に各藩や浪士の中でも特に議論好きが多い。 だから覇気がないことは不利になりがちだ。 もう一度自分の中で一番は国のことだ、と再確認すると、議論に入っていった。
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