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「生きるから。安心して・・。」
泣きそうな顔で言われた。
ごめんね。
こんな言葉でしか、君をつなぐ手段がわからない。
彼女の涙が、数日前の出来事が嘘ということを証明していた。
彼女だって、苦しいに決まっている。
自惚れじゃないけど、好きな人に嫌いと言って、自分の中で引いた線。
彼女には、僕のことを忘れて、あの自警団のとき、遊女たちの太陽となって輝いていた、あの頃に戻って欲しい。
それでもわがままな僕は、君を嘘で縛り続ける。
忘れないで、なんて言ったら、彼女はずっと忘れないだろう。あの生活には戻れないに決まってる。
付き続けた嘘も戻ってこない。
楽しかった日々も戻ってこない。
それでも、それをわかっていても、僕は嘘を付き続けるんだ。
「またね・・・。」
そう告げると同時に意識が飛んだ。
最期に見えたのは、彼女の泣きそうな微笑みだった。
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