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長州藩邸
最近見なくなった紅葉を探し、藩邸を出ていった稔麿が帰ってこない。
その事に最初に気がついたのは、同じく足軽の入江九一だった。
「玄瑞。」
何も言わずにずパーンと旧友かつ同志である久坂玄瑞の部屋の障子を開ける。
「ねえ?いくら九一だからって声かけてから入るってもんが由緒正しき長州男児ってもんじゃない?」
笑顔で額に青筋を立てて怒っているのが、久坂玄瑞。この部屋の主である。
「これしきのことで怒る方が器が狭いな。」
そう言い返しつつ玄瑞の正面に座った。
「稔麿が帰ってこないが。」
「紅葉の詮索しに行ったんじゃ?」
動揺する顔色を悟られないように下を向いたのを九一は感じ取った。
「新選組か。」
「・・・。」
黙秘。
それは肯定でもあった。
「・・・、僕が身分が低いのはわかっている。だが、紅葉がいないのと、稔麿が消えたのはわけが違う。探しに行ってくる。」
そういったときだった。
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