CHANGE

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 本を開いた。  それはあるいはなんでもない日にふとした気持ちで、だったり。  図書室に行って、見つけて、嬉しくなって手に取った、だったり。  夜の本屋さんに、その一冊をめがけて飛んでいった、だとか。  どうしようもなく消えたい夜に、出逢いに行く、そういうことだった。  世界が切り替わる、夜。  あたたかい部屋で。  誰もいない夜のリビングで。  家族と一緒に、並んで。  消えたいとき、わたしをひきとめる、魔法があった。  苦しいとき、わたしを救ってくれる、存在があった。  泣きたいとき、わたしを笑顔にしてくれた、言葉があった。  死にたくなった夜は、本棚から一冊の、宝物みたいなその本を手に取った。  ふと、見つけた。  なんてことない気持ちで、開いた。  そうしたらそこには、わたしの人生を変える出会いが待っていたんだ。  逢いたい人がいた。  幸せになってほしい人がいた。  どうしても、どうしても、泣いてほしい人がいる。  泣いている描写が一度も出てこない、気づいたのはいつだっただろう。  誰にも見えない場所で、静かに涙を流したかもしれない。  そう思うと、どうしようもなく切なかった。  わたしは、あなたが存在してくれている、それだけでもう大好き。  だけどあなたは違うと思う。  存在するだけじゃ、あなたは幸せにはなれない。  何もしなくても、生きててくれるだけでいいけど、ただ生きるだけのあなたはあなたじゃない。  たくさん苦しんで、絶望して、希望を見つけて、笑って、出会って、出逢って、見つけて、喜んで、成長して、好きなことや得意なことをやって、ときには辛いことも経験して生きていく。  泣いて、怒って、それでも愛して、楽しんで、たくさんの愛をもらって、そうやって幸せに生きる、そんなあなたが大好きだ。  そんなあなたを推してるんだ。  あなたのどんなに暗い過去も、辛い想いも、それを抱えるあなたも、全部丸ごと愛せる。  ずっと。ずっと。  ページの向こうで、たしかに息づいている、わたしの大事な大切な大好きな推し。  息苦しい夜には、そのかっこよさに息が詰まった。  怒りがおさまらない夜には、その可愛さに癒やされた。  消えたい夜には、その言動全てを愛したくなった。  泣きたい夜には、そのまっすぐな命に泣いてしまった。  あんまりに尊いから、もう、わたしを傷つけるすべてがどうでもよくなってくる。  出会えてよかったと思えるんだ。  こんなに好きになった人は今までいないぐらいに、深く心に刺さって。  一生好きじゃないかもしれない。  でも、少しでも、少しでも長く、貴方を好きでいたいと思う。  そして忘れたくない。  あなたを好きでいた時間を。  あなたの言葉を、生き方を。  あなたの存在、好きになったこと、全部全部憶えていたい。  あなたに会いたい。  一回でいいから。  大好きだよとか、生きて欲しいとか、そんなことわたしが伝えなくてもいい。  推しを幸せにするのはわたしじゃないと知ってるから。  だからわたしたちはたぶん、小説で、詩で、絵で、歌で、グッズで、自分の気持ちを届けている。  だけど、もし会えたなら。  話せなくたっていいんだ。  ただ、顔が見られるだけでもいい。  というより、あなたの顔が見たいんだ。  死にたくなった日もあったけど、まだまだあなたの姿を見ていたくて、頑張ろうと思えた。  家族との距離が離れた日は、心配されたいとか、もう期待されたくないとか、生きてるだけで肯定されたくて。  病気になりたいとか、大怪我したいとか、そう思ったときもあって。  だけど病気になったら、イベントがあってもいけないなって思った。  大怪我したら、推し活ほとんどできないなって気づいた。  そうしたら、今のわたしで頑張ろうって思えるようになった。  何かを伝えたい、とかじゃない。  ありがとうも、大好きも、全部独り言でいい。  だけど、あなたに逢いたくて、今日もページをめくった。  だから。  きみにとっての(うち)の子たちも、そんな存在でありたい。
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