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マンションへ戻ると、鍵を開けて玄関へ入る。 築22年のこのマンションは、10年前に真亜子が購入したものだ。 真亜子はバツイチだった。 30歳の時に離婚をし、女手一つで一人娘を育てた。 娘の亜由美(あゆみ)は27歳。 大学を出た後は、都内で一人暮らしをしながら会社勤めをしている。 亜由美には婚約者がいて、もうすぐ結婚する予定だ。 子育ても終わり、真亜子はやっと自分の事だけを考えられる年代になった。 「ただいま...」 誰もいない家に声をかけてから、真亜子はリビングへ行き、 買って来たオルゴールをテーブルの上に載せる。 そして、すぐにオルゴールを箱から出してみた。 真亜子はその可愛らしいオルゴールを手に取ると、 裏側にあるネジを巻いてみた。 あの日、健介から贈られたオルゴールは、 一度もその音色を聴かないまま処分した。 なぜ音を聴かないまま処分をしたかというと、 その音色を聞いてしまったら、 自分の心が壊れてしまいそうな気がしたからだ。
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