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ほんの少しだけ皺の寄った薄桃色の封筒を、コートのポケットから取り出した。
その封筒は無地のもので、表面には自分史上最高に丁寧な文字で『相馬 遥希くんへ』と書いてある。
裏面の逆三角形の封じ口には、シーリングスタンプに見立てた赤いステッカー。ベタにハートのステッカーにしようかと迷ったのだが、あまりに気恥ずかしいのでやめることにした。
手紙は一カ月前に書いた私の八カ月間の想い。
ちなみに、これは三代目。
一代目は握りしめすぎて、ものの三日でシワシワのヨレヨレになってしまい、二代目は角がすり減り、みすぼらしくなってしまった。とても渡せるような代物ではなくなってしまったので、昨日新たに書き直したのだった。
震える手をどうにか落ち着かせて、一文字一文字に気持ちを込めた。渡す瞬間のことを想像して、心臓がトクンとスキップするように高鳴った。
同じ内容のものを書くのは三度目のことなのに、ちっとも慣れてはくれなくて、相馬くんへの想いは日に日に膨れ上がっていく。
昨夜、手紙を書き終えた時には 明日こそ渡すんだ…と、意を決したはずだったのだけれど…
今日もまた、渡すことが出来なかった。
明日こそは…
私はそう心に決めて、手紙の入った封筒を登校用の鞄の内ポケットにしまった。
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