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クラスの違う相馬くんとは、委員会が一緒で、生活の注意を促すポスター作りで同じグループだった。
人見知りの私は、なかなかグループの意見交換の輪に入れずにいた。
「"ネクタイをしっかりと着けましょう"ってここに書いて、その下にネクタイの絵でよいんじゃない?」
「そうだなー…って、これ書いてる俺らもネクタイしてないけどね」
同じグループの子たちがケラケラと笑う。
「私、字 下手だからパス…」
「俺も無理」
「絵はどうすんの?」
「ネクタイくらいなら描けるかも…でも 字 はちょっと無理」
「じゃあ、絵は任せる」
私と相馬くん以外の四人が話を進めていく。
誰一人知ってる人がいない上に、「私がやります」と自ら立候補することは「私 字 には自信があります」と主張することになるような気がした。私の性格上、とてもじゃないが言い出すことはできなかった。
それでも何かやらないと…という気持ちはあって、「えっと…私…」と小声でモジモジする。すると、相馬くんが「綾瀬さん 字 上手だよ…」と皆に言った。それから「頼める?」と静かに私に尋ねた。
「綾瀬、字 うまいんだ?」
「え~助かる!」
「字 上手いのいいなぁ…」
他のグループの子たちも相馬くんの発言に乗っかり、私はあっという間に輪の中に入っていた。
何の接点もなかった寡黙でクールな相馬くんが、私なんかの 字 を見てくれていたことに驚いた。そして、なんだか自分が認められたような気がして、すごく嬉しかった。
それから、気が付けばいつも相馬くんを目で追っていた。ごく稀に見せる笑顔が見られた時には、こそばゆい気持ちになり、その笑顔が自分に向けられたら…と想像して、私の心臓はドキンとスキップした。
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