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私は鞄の中から取り出した薄桃色の封筒を、コートのポケットに忍ばせた。そして、好機を狙って、玄関先で相馬くんが出てくるのを待った。
学校からバス停に行くまでの間…もしくは、相馬くんと同じところでバスを降りて…
私が手紙を渡すタイミングをイメージしていると「じゃあ、望結、頑張ってね」と、琴音が幼馴染 兼 彼氏の悟くんと帰って行った。
寒空の下、玄関から出た二人は楽しそうに白い息を吐きながら肩を並べて歩いていく。
微笑ましいカップルだな…と、しばらく遠目に眺めていると、悟くんが琴音の手を自分のダウンジャケットのポケットの中に招き入れるのが見えた。
うぉぉぉ…
見ているこっちが恥ずかしくなり、なんだかとてもくすぐったい。私は口元を緩ませて、つい足をバタつかせてしまった。
よし、何かわかんないけど、頑張ろう…
そう気合を入れていると、気づけば相馬くんが目の前を通り過ぎて、バス停に向かって行ってしまっていた。私は慌てて相馬くんの背中を追いかける。
ポケットの中に手を入れて、サラリと滑らかな紙の感触を確かめて、気持ちを奮い立たせる。
ドキドキドキドキ…
心臓がまた暴れ出す。
周りに他の生徒たちはいない。
今かな?…今だよね?
「あの…」
私はついに声をかけた。そしてもう一度「あの、相馬くん…」と名前を呼ぼうとした時。
――――ズル!!
「ひゃっ!!」
相馬くんが振り返る瞬間、私の視界から相馬くんが消えた。
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