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06_第一関門、どうなった!?
くる日もくる日も課題に取り組んだ。
同時進行で期末テストの準備だ。
ここで赤点をとったら特例を作ってくれた担任教諭に申し訳が立たない。
今日が何曜日なのか、いまが何時なのか、わからないくらい勉強をした。
なにもかもががむしゃらだった。厳しい残暑も気にならなかった。
なんとか課題を提出して期末テストが明けた数日は脱力してどうすごしたのか覚えていないほどだ。
余市、と担任教諭が手招きをした。職員室へ連れていかれ、ほら、と書類を渡された。
「来週の月曜、校長を交えた学校推薦の面接をする。志望動機とかはっきりいえるように練習しておけ。自己推薦文も書いてきて。それは所定様式を印刷したやつな。こっちは過去例とか注意点とか」
印刷物の束をさらに山ほど差し出された。せ、先生、と滉太は戸惑う。
「それじゃあ、おれ」
「がんばったな。だけどここからだぞ。まずは自己推薦文に思いの丈をぶちまけろ」
はい、と力強く滉太はうなずく。
じわじわと身体が熱くなる。職員室をあとにして一歩進むほどに実感がわいてきた。
そうか。おれはやったのか。推薦のチャンスをつかんだのか。印刷物の束を強くにぎる。
やった──やった、やったっ。
小走りで教室へ戻ると、紋別が椅子に座って待っていた。よお、と片手を滉太へあげる。
「その様子だと、よかったな」
「なんでわかんの」
「目つきが全然違う。頬も赤いし」
「お前に礼をいわなくちゃだな。あのとき無茶振りしてくれたから」
「ほら」と紋別は照れ臭そうに滉太の机へ小さい袋をおいた。煮干しだった。
「推薦ゲット祝い」
「──カルシウムをとれと? というかお前、今日が発表だなんて知らなかったしょ。その煮干し、ずっと持ち歩いていたの?」
「彼女にやれば?」
滉太は笑みを消す。紋別を見る。
紋別は泣きそうにほほ笑んでいた。ああそうだ。視線を落とす。
こいつはキングが実はメスだってことを知っていたっけ。
それに姉ちゃんから──話を聞いて知っているんだっけ。
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