モリーズドール ~亡者人形制作工房~

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「本当の理由ですね」わたしは彼女の真顔に視線をうつし、きいてみる。「建前上の理由は、どういったものになっていたんですか?」 「病気です、精神の。『お母様が亡くなったのは、心の病のせいです。だからこれは、自殺ではなく病死と言っても過言ではないと思います』と、母の自殺に関する処理をした警察官がわたしにいいました」 「なるほど。でも、盛本さんは納得できていないんですね?」 彼女は長い髪をかきあげ、はい、とうなずいた。 「当時わたしは25歳で、アメリカに留学中でした。忙しくて2年ほど帰省できておらず、母には会っていなかったのですが、彼女が心の病で自殺をするとはどうしても思えないんです。その1週間後にはわたしが留学を終えて帰国して、母の事務所を継ぐ予定になっていました。『鏡花が帰ってきたら、わたしはしばらく仕事を休んで、今までやりたかったことをやるわ。スカイダイビングとか大型バイクでツーリングとか、そういうのを片っ端からぜんぶ』と、母は言っていたんです。彼女は優秀で努力家なうえ、明るく、活動的な人でした」 感傷的になって、話しながら泣き出しても不思議でないような内容の話ではあるが、彼女の声は震えもしない。気丈な人なんだな、と思う。 「素敵なお母様だったんですね」 わたしが相槌を打つと、盛本鏡花は再び話しはじめる。 「母は23歳、未婚でわたしを産んでから税理士資格をとったんです。父親である男性は母の妊娠を知ると、どこかへ逃げてしまったそうです。父親のことやわたしを出産するより前の話で母から聞いたことがあるのはそれだけです。母は過去の、わたしが生まれるより前の話をするのを嫌いました」 盛本鏡花は小さなため息をついた。
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