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僕が住むライオネル王国の周りには無数のダンジョンが存在する。時折、そのダンジョンから魔物が出てきて周囲の村を襲ったり、国を襲おうとしてくるため、国内では魔物討伐パーティーというものがたくさん結成された。僕もその中の一つに所属している魔法使いの一人だ。
パーティーの中には剣も魔法も使える勇者、それから剣士やヒーラー、あとは僕みたいな魔法使いがいて、基本は四人から五人のメンバーで動く。僕がいるパーティーは勇者のガイル、剣士のアッサム、ヒーラーのラリファ、そして僕の四人組だ。
「東の第三ダンジョンで巨大なケルベロスが確認された。ダンジョンから出てくる前に奴を討伐するのだ!」
今回、王から出された命はこうだった。ケルベロスを討伐した者には多額の褒美と勲章が授与される。次の日の早朝から、いくつものパーティーがこぞって討伐に向かった。
「クリス、ビビって先に逃げるなよ?」
他のパーティーの群れに混ざって歩いているときにガイルに言われた。たしかに僕はビビりだけど、一度だって逃げたことはない。みんなより、ちょっと身体が小さくて弱く見えるだけだ。
僕は黒髪で赤髪のガイルみたいに目立つ容姿はしてないし、アッサムみたいにがっしりもしてないし、ラリファみたいに妖艶で綺麗でもない。それでも、僕はこれまで仕事だけはちゃんとしてきたんだ。
それなのに……
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