15人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「撤退だ! アッサム! 天井を落とせ!」
「了解!」
僕がケルベロスの動きを止めている間に、いつの間にか、三人は一階層への階段まで下がっていて、ガイルの合図でアッサムは躊躇うことなく階段を塞ぐように天井を落とした。上から落ちてきた大きな石ですぐに三人の姿は見えなくなった。
「待って! やめて! やめてよ! 置いていかないで!」
土埃に巻かれながら僕は石を拳で叩いた。
「お前が上手くカバー出来ないからいけないんだ! 俺たちは死にたくねぇんだよ!」
ガイルの声が隙間から微かに聞こえる。その言葉をどんな顔で言ってるんだろう?
「僕だって死にたくないよ! 逃げるなって言ったのはガイルじゃないか! アッサム! ラリファ! ねえ!」
僕だって逃げたい。僕は必死で叫んだ。でも、向こう側からの反応はない。恐らく、もうそこには誰もいないのだろう。
「置いていかないで……」
土埃で遮られた視界の中で僕の言葉は消えた。
まさか、置いてけぼりにされるなんて……。
他のパーティーは僕らよりも先に逃げ出していたのに、自分たちなら大丈夫だろう、と高をくくったガイルの指示で残ったのがいけなかった。
ケルベロスがあまりにも巨大であまりにも強すぎたのだ。
僕の後ろには深灰色をした恐ろしいケルベロスがいる。
最初のコメントを投稿しよう!