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逡巡する男
しかしそれへ、こちらも額に青筋を立てたカナが立ち上がって、云い返すよりも何よりも、遮二無二(しゃにむに)男に向かって行こうとするのを大伴さんが懸命に止める。「カナ!いいから!おとなしくして!…」さらに「ミカ、村田君、カナを抑えていて」と要請する。ミカは「カナ…」と呼びかけてからカナにすがるが俺は何もしないで…いや、出来ないでいる。俺が抑えようものならカナの怒りは倍加するだろうからだった。カナをミカに託してから大伴さんは男に向き直り深々と首(こうべ)を垂れて、謝って見せた。
「どうも申しわけありません。(カナとミカを指してから)この子たちはまだ分別の効かない娘盛りでして、なんでも笑ってしまうのです。あの…それこそ葉っぱが木から落ちても笑ってしまうような塩梅で…へへへ」と照れ笑いをし男の剣幕を抑えようとする。男はこの時始めて大伴さんの美貌に気づいたような表情(かお)をし、同時に自分を上回るような、ちょっと異常とも思えるほどのカナの剣幕にたじたじともしたようだ。またこちらも改めて思い出したかのように男である俺の存在を警戒する表情をもして見せた。それやこれでさきほどの俺同様毒気を抜かれたが如くに「…ま、あんたがそう云うんなら、お、俺だって別にいいんだ。その…あ、あの子たちに少しは礼儀を弁えるよう云っといてくれよ」と云い残して立ち去ろうとする。
【一発張ってやろうか?!(-_-メ)…カナの剣幕。Farmgirlmiriamさんの作品 from pixabay】
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